脱・「つぎつぎになりゆくいきほひ」 藤本 篤二郎

こんにちは!SET学生メンバーの藤本 篤二郎です!

2015年3月のChange Maker Study Program(以下略:CMSP)5期に参加し、2015年夏季(6期)スタッフ、2016年春季(9期)スタッフ、2018年春季(32期)プロジェクトリーダーを経て、今は学生メンバーとして所属しています。

大学では美学芸術学といって、感性のような目でとらえることのできないものを、芸術を切り口にしたり、これまでの哲学・思想を手がかかりにしたりしながら考える学問を専攻しています。

今回、SET BLOGを書く機会をいただいたので、最近触れた哲学のトピックを取り掛かりにしながら、特にCMSPの文化・その可能性について、僕なりの視点で一番の特徴をお伝えできたらいいなと思います。

 

1.日本人の思想―丸山眞男の問題意識から

日本の政治学者、思想史家の一人である丸山眞男(まるやま まさお)は、日本人の思想の根底には「古層」とも言える、思考パターンがあると考えていました。丸山はこの「古層」を、歴史を通じて不変なものではなく、変容や修正を繰り返すものと捉えており、「普遍的なもの」という観念(時代や状況に関わらず主体的に判断し決断するための基準となるような考え方)が日本人の内に根付くことを妨げている原因でもあると考えました。1972年に発表された論文「歴史意識の「古層」」では、この日本人特有の思考パターンについて分析を行っています(*1)。

分析の結果、この「古層」とは「なる」「つぎ」「いきほひ」という語に特徴づけられます。ここでは詳しい説明は省きますが(*2)、これらは簡潔にまとめると「なりゆきに身をゆだねる主体性のなさ」ということです(=「つぎつぎになりゆくいきほひ」)。

 

2.CMSPの思想―「何か、おかしくない?」という判断力

丸山はこの思考形式が、現代においても(例えば太平洋戦争開戦を例にとって)日本人の行動規範を支配していることを問題視していますが、これには僕自身も激しく同感してしまいました。

 

思考形式が完全に日本人なのです(正真正銘、日本人なんですけど。笑)。

 

そう感じた経験が、32期CMSPでありました。「どうしたい?」をメンバーに問いながらも、「自分はどうしたいか」への思考が全然進まないのです。半年間の中で、それは少しずつ精度を上げていくことはできたように感じますが、チーム内での意思決定の弱さは、最後まで課題だったと感じます。いわゆる「場の雰囲気にのまれる」といったものです。

 

でも、CMSPに複数回関わることもなければ、このような自分自身の課題、身の回りにある組織でよくある課題に自覚的になることはなかったのではないか?と思います。まさに「チェンジ・メーカー」ですね。変化を生み出しています。

では、なぜCMSPで、このような「つぎつぎになりゆくいきほひ」の思考に気づき、そしてそれを打ち破るヒントを学べたのでしょう?

僕は“変える前の判断力・表出化”にあるのではないかと考えます。なんとなくで、誰のせいとも言えない状況。なりゆきのままに流れていく状況。そのような場にあって、「これ、何かおかしくない?」という判断を発することで、主体性なく身をゆだねていた場を、チームメンバー全員が主体性を投げ込み、「最高の場のイメージ」を実現できるようにしているのだと。

<↑32期CMSPの期間中にゼロから作ったもの。砂利を剥いでブロックを敷き詰めただけの場所が、バーベキューや焚火のできる場所に早変わりする花壇スペースに。1週間中も大いに使いました。その時に広田の子が植えてくれたヒマワリの種が、人の背丈を超すぐらいまで成長しているみたいです。>

 

3.「うむ」ことと「つくる」ことの可能性

しかし、そもそもその場が「何だかおかしい」という判断は、とても感性的で捉えがたいように思われます。そこを大切にしているのもCMSPの特徴といえるかもしれませんが、そのような感性的判断を可能にしているのは、まぎれもなく「生み出したい場・成果」(実現させたい目的と密接にリンクしたもの)が、メンバー内でイメージできているからでしょう。現状の延長線上にある未来像ではなく、生み出したい・作り出したい未来を鮮明に描き続けることが、主体性ある意思決定を担保しうることを示唆しているようです。

 

丸山の古層論研究において、阿部氏は『古事記』にみられる生成の発想が、自然増殖という楽観主義的発想に支配されていることは否定できないとしつつ、「つぎつぎになりゆくいきほひ」という歴史意識を越えていく可能性を「うむ」「つくる」という発想に見出しています(阿部,2014)。また丸山自身も、「古層」的思考との絶えざる対決を「精神の永久革命」と呼び、「普遍的なもの」を獲得する契機となるとして、「古層」的思考と向き合い続けることの重要性を述べています。

CMSPは、初めて共同生活をするメンバーと、1週間という限られた期間の中でゼロからアクションを考えて実行しますが、まさに「うむ」「つくる」の連続です。というか「うむ」「つくる」プロセスしかないともいえるかもしれません。このプロセスがしかし、日本人を伝統的に縛ってきた思考様式を自覚させ、超克する可能性も秘めていると考えうるのです。

【私の広田ベストピクチャー】

広田町・泊(とまり)地区の後浜(うしろはま)漁港から少し出たところからの朝焼けです。後浜の牡蠣を育てている方の船にのせていただき、海上から見た景色です。出港した時には海と陸の区別がつかなかった船上の風景が、徐々に鮮明に区切られていく様子が好きです。

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