冬のこの時期になると、きっと誰もが心に「サンタさん」の存在を思い浮かべるのではないでしょうか?
広田町では、一味違う「サンタさん」が現れます。
SETの事業の一つである高田と僕らの未来開拓プロジェクト、通称「たかぷろ」は、
陸前高田の中高生と外部の大学生が、町と自分の可能性にチャレンジし、生きたい生き方に向かって走り続けるプロジェクトです。
そして、そのたかぷろの冬の顔としてもう広田ではすっかり恒例になりつつあるのが、「たかぷろサンタ」です。
たかぷろサンタ企画は、東京の大学生と町の中高生、そして町の大人の方々が一緒になって、広田町の全世帯に手作りのプレゼントを配って回るというものです。
6年目になる今年は12月16日の日曜に本番が行われ、中高大学生と町の大人の方々合わせて110人ほどが集まりました。
今年のプレゼントは「砂時計」。
2ヶ月に1回色違いの砂を町の人たち自身で瓶に入れていってもらうことによって層の積み重ねで町の未来へ共に進んでいる様子を表しています。砂の袋の中には中高大学生からのメッセージと広田のゆるキャラ「とらわかまる」からのメッセージが入っていて開ける楽しみも詰まっています。
今回は、その今年度のたかぷろサンタに参加した中高生や大学生、そして町の大人の方にインタビューしてきました。
広田のサンタさんたちは、いったいどんな気持ちでたかぷろサンタにかかわっているのでしょうか?
・住んでいる町の行事に関わる
広田町根岬地区在住の菅野媛奈さん(大船渡高校3年生)はたかぷろサンタについて、「私は、たかぷろサンタは楽しいだけでなく町全体に配るプレゼント作成など、大変なことも多いものだと思っています。しかし、だからこそ終わった後に得られる達成感は大きいです。また、幅広い世代でつながるからこそ、町全体で一体感が生まれるものだと思っています。」と語ってくれました。
媛奈さんは、今年度にたかぷろの中高生企画メンバーとして活動をはじめ、たかぷろサンタには初参加だったそうです。
(写真前が媛奈さん、後ろが弟の凌亮さん)
いつもサンタが自宅に来るのを見ていた彼女も、今年は配って回る側として参加することになりました。
「楽しかったし、サンタに参加してよかったと思いました。広田の行事の楽しさを感じられました。」とも話してくれました。
・貴重な経験の場に
このたかぷろサンタは広田町外から多くの中高生が来てくれるのも大きな特徴の一つになっています。
広田町の隣町である小友町から今回参加してくれた、吉田琢真さん(高田東中学校3年生)もその一人です。
「サンタを通じてたくさんの大学生に会えてとても楽しかったです。」
そう話す彼も、媛奈さんと同じく今年初めてたかぷろサンタに参加しました。
「自分の住む小友町ではこういった企画自体がそもそも珍しいので、貴重な経験ができる場だと思っています。来年も予定が合えばぜひ参加したいです。」
こうした地域間でのつながりが増えていくのも、たかぷろサンタの魅力の一つですね。
・今年は去年とは違う景色を
毎年、この冬の一大企画を成功させるためにたかぷろの大学生は奮闘しています。
松浦亜実さん(東北福祉大学2年生)は、去年の冬に参加者として初めてこの広田町を訪れてサンタを経験し、今年度はたかぷろの企画メンバーとして活動しています。
(中央が亜実さん)
去年とは違い企画からサンタを作り上げた今年はどうだったかという問いに対して、「やはり企画から参加すると思い入れが違いました。特に、私は今回プレゼントについて担当したので、町の人や中高生からプレゼントについてコメントをもらえた時はとても嬉しかったです。」と答えてくれました。
また、「プレゼントを一個一個手作りすることで、たかぷろにかかわるすべての人がみんなつながっていることこそ、このたかぷろサンタにしかない魅力だと思います。前年度の良かったところや反省点をたくさん生かすことで、年々の積み重ねを感じることができるのもたかぷろサンタならではの経験だと思いました。」とも語ってくれました。
2年連続で参加した彼女にとって、たかぷろでの経験はとても大きなものになっていたようです。
・たかぷろサンタで町全体がひとつに
大学生や中高生に町の案内をしてくださる大人の方々、「大人サンタさん」と呼ばれる方々はこのたかぷろサンタのことをどう思っているのでしょうか。
6年前の最初のサンタプロジェクトから関わっていただいている齋藤百合子さんは、お住まいのある広田町長洞地区の大人サンタさんとして毎年たかぷろに協力してくれています。
(右から2番目が百合子さん)
まず、百合子さんには最初に「たかぷろサンタを開催することで広田にどんな影響が起きると思いますか?」と質問させていただきました。百合子さんは真剣に「昔からのサンタ企画が年々大きくなっており、今ではこの町で100人規模を超えるものになりました。単純に、町を巻き込んだ大きな企画のおかげで、町全体がにぎわっていると感じます。」と答えてくださいました。
次の「このたかぷろサンタという企画自体が、町民の方々にとっては冬の恒例行事として、習慣として実感がありますか?」との質問には「実感はあります。大学生や中高生がプレゼントを用意し始めると、ああ始まったなと思います。」と答えてくださいました。
また、百合子さんはプレゼントを配る私たち大学生や中高生に向けて、毎年プレゼントを用意してくれます。「SETの大学生や中高生が一生懸命企画してプレゼントを配るのは素晴らしいし、そんな彼ら彼女らにも企画を通して達成感や一体感を味わってほしいと思うんです。そのため、小さな形でもいいので毎年私の方からサンタさんたち用にプレゼントを用意するようにしています。」と語ってくださいました。
最後に「たかぷろサンタにしかないものは何ですか?」と質問すると、「こうしていろんな世代が広田町という場所を通して、地域とつながっていると実感できるところです。町全体が一体となってこの企画を進めていると、改めて感じますね。」と答えてくださいました。
町の方からこのような言葉をいただけると、毎年のサンタがとても価値あるものに感じられますね。
・終わりに
最初は町の子供にだけプレゼントを渡していたこのたかぷろサンタも、今では広田町全世帯にプレゼントを配って回る、町全体を巻き込む大きなものになりました。
来年も再来年も、その先もずっと広田町のよき伝統として残り続けてほしいですね。
執筆者:土田麟太郎(学生ファミリーメンバー、現在はSET内のメディア・広報系事業「はしかけ」で活動中)
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